Hoppe

6歳0歳の女の子を育てている40代です。
絵本や日々の出来事を記録したくてはじめました。
よろしくお願いします。

記事一覧(8)

『もりのてがみ』すみれがさく季節

今日はすっかり春のあたたかさで、フリージアがふわあっとうっとりするようないい香りです。そろそろ本当に春が近づいてきましたが、『もりのてがみ』は寒い冬から春に移り変わる季節にぴったりの絵本です。主人公の女の子、ひろこさんは森(林?)の中のおうちに住んでいます。と言ってもどこか遠い外国の森ではなく日本のどこかの森です。たぶん長野とかそんな感じ。寒い冬、外で遊べない日にひろこさんは自分の部屋で森のおともだち(りすさん、とかげさん、うさぎさん、ことりさん、もみのきさん)に手紙をかきます。暖かそうなひろこさんの部屋には昔学校にあったようなやかんが上にのった円柱型の石油ストーブがあります。手紙を書く勉強机の上には蛍光灯の電気スタンドとスヌーピーの置物、昔懐かしいデザインの文房具(シャチハタのスタンプ台とか青い筒に黄色いキャップののりとか)などがおいてあります。そしてそれぞれに宛てた手紙は見開きのページいっぱいに机の上の様子とともに描かれているのですがこれが最高にかわいい!手紙はカラーペンや色鉛筆で描いたイラストつき。そして手作りの封筒にはそれぞれにぴったりの絵柄の手作りの切手が貼られています。一通一通時間をかけて丁寧に書いていることがよくわかります。 そしてなにより手紙の中身!なんともいえず文章に味があってかわいらしくてにっこりしてしまいます。手紙の最後は「もりにすみれがさいたらこのもみのきのしたでまっています」としめくくり、ひろこさんは手紙をもみの木に吊り下げておきます。雪が溶け春が訪れすみれの花が咲くころ、おともだちからはうれしい返事が届きます。なんていうことのない話といえばそうなのですが、最初に読んだときからものすごく惹かれる一冊です。なんでこんなに惹かれるのかなあと考えてみましたがその理由はきっとこうです。現実世界とファンタジー、想像の世界が当たり前のようにつながっている感じがすごく懐かしいのだと思うのです。上にも書いたように絵本の舞台は明らかに日本で、描きこんである部屋の様子からは時代は昭和というところまで具体的。だけどそこに住むひろこさんはごく当たり前のように動物や木と話すことができます(ちなみにこの本に人間はひろこさんしか出てきません。)。とくに大きな事件が起こるわけでもなく、日常とファンタジー、想像の世界が当たり前のように自然に溶け合っています。大人になった今でも絵本を開けばファンタジー、想像の世界に旅をすることができるけれど、子供のころは絵本を開かなくても毎日がそんな世界と地続きだった。その時の感覚を思い出すからこの本にこんなに惹かれるのではないかと思います。 とはいえ平成生まれ、2010年代生まれの娘もかきこまれてた手紙のすみずみまで見てはとても楽しんでいましたよ。春を迎える季節にぜひ。

『パパがサーカスと行っちゃった』 えっ⁇

インフルエンザだった娘が一週間ぶりに登園して久々に静かな朝です。インフルエンザと言ってもすぐに解熱してめちゃくちゃ元気だったのでエネルギーを吸い取られました…。さて『パパがサーカスと行っちゃった』。タイトルのまんま、パパがサーカスと行っちゃうお話しです。ある朝、こども達は超絶ハイテンションなパパにたたき起こされます。町にサーカスがやってきたから見に行くぞ!というのです。大興奮のパパとは裏腹に、こどもたちはまたか、と言った感じできわめてクールです。きっとこのパパは普段から夢中になると猛突進するタイプに違いありません。行かないと言っても無駄と知っている家族(妻と息子と娘)は一緒にサーカスに向かいますが観客席はガラガラだし出し物もパパがいうほど面白いとは思えません。サーカス終了後、こども達を車に待たせ、ママとパパは口論をはじめます。そしてついに車にはママだけが戻ってきました。ママは一言「パパがサーカスと行っちゃた!」‼︎サーカスと行っちゃっても、パパは世界中から手紙をくれます。手紙には会えなくてさみしいと必ず書いてあるのでした。さて時がたち、パパはついに立派な立派なサーカスの人になって帰ってきました!口から炎を出しトラをあやつりナイフ投げだって完璧です。家族は感激、大絶賛。そしてパパはもうけっして家を離れないと約束し、家族はまたみんなで仲良く暮らすようになりました。うちの子はこういうぶっとんだ話がだいすきなので大喜びです。パパがサーカスで活躍するページをすごいすごいとじっくり楽しんで見ています。最後にさりげないオチもあったりして、あははと笑えます。最後にこどもと二人、楽しかったねと言いあって本を閉じようとした時 、こんな解説が目に留まりました。 「(著者が)この本で伝えたかったことは人はいくつになっても夢をもてるということと、人生はその気にさえなればどんなにでも楽しくすることができる、ということだそうです。」。これを読んでちいさな??が頭に浮かびました。いや、言いたいことは良くわかるのだけれど、一人で子どもを任された妻は大変すぎやしないか⁈なぜ家族がいる設定にしたの⁈作者はイスラエルを代表する作家の方だそうです。英語が苦手なので日本語サイトだけの検索だといまいちどういう作家さんかわかりませんでしたが、ネットで得た数少ない情報の中にこんなものをみつけました。↓

『かさの女王さま』幸せなこども時代

絵だけを見たら中国のお話しかと思いましたが舞台はタイの山あいの村だそうです。この村では何百年ものあいだ傘作りがおこなわれてきました。主人公の女の子ヌットの家でもかさを作っています。木と竹で骨を作るのはお父さん。かさに張る紙をすくのはおばあちゃん。そして絵をつけるのはお母さんの仕事です。ヌットは自分が絵つけしたかさをほこらしげにかかげる女の人たちにずっと憧れています。そんなある日ついにヌットも絵つけをさせてもらえることになりました。ヌットは上手に絵つけをしました。それを見たお母さん、お父さん、おばあちゃんは感心し、口々に褒めてくれました。お父さんはぎゅっとだきしめてくれました。つぎの日ヌットは絵つけをしていない5本の白いかさをまかせてもらいます。お手本どおりに花と蝶を描くつもりでしたが、まず蝶をかいたヌットはつい蝶を追いかけるゾウをかいてしまいます。その後も夢中になって生き生きと動くゾウをかくヌット。ヌットは象が大好きなのです。それに気づいたお母さんとお父さんは心配そうに困った顔をうかべます。 作ったかさをおろす村のお店では花と蝶のかさしか売らないのです。ここでの一文が印象に残ります。「絵つけはあそびではなくしごとでした」ヌットもそれがよくわかっているのでそれからは花と蝶をせっせとかいて働きます。でも夕方になると余った竹と紙で小さなかさを作りゾウの絵をかいてはまどべに並べるのでした。さてこの村では毎年お正月に一番の絵つけをした人がかさの女王さまに選ばれます。今年はなんと王様が選んでくださることになりました。王様が選んだのは…幸せなこども時代、という言葉が浮かびました。6歳の娘がこの本すごい好き!と気に入りましたがそうだろうなあ、と思います。大人のわたしでさえ、ヌットのまわりにいる大人たちの、穏やかで、足が地についていて、愛情深い感じにすごく安心するのです。こどもがちゃんと大人に守られている安心感。ちなみひそかに新鮮だったのは、王様がヌットたちに〇〇ですか?のような丁寧な言葉で話しかけるところ。原文は英語なのでこれは訳者さんのお仕事かと思いますが全体の優しい雰囲気にマッチしていて素敵でした。作者のシリン・イム・ブリッジズはカリフォルニア生まれの中国系アメリカ人、絵を描いたユ・テウンはニューヨーク在住の韓国人だそうですが、言われてみれば絵もお話しも素朴な中に、どこか現代的で自由な香りがする気がします。幸せで優しい絵本、おススメです。

『王様と九人のきょうだい』 バカウケ

昔話の絵本ってなぜか絵が地味なことが多くて、うちのこどもに絵本を選ばせるとあんまり自分からは手にとりません。でも読み聞かせた時に目を輝かせて夢中になるのは昔話が多かったりします。長い長い年月をかけてブラッシュアップされたお話しの完成度ってすごいなあ、と思います。今日読んだ『王様と九人のきょうだい』は中国の少数民族の昔話です。〜大昔のこと。あるおばあさんが、これまで子宝に恵まれなかったことを悲しんで泣いていると、謎の老人があらわれます。老人は飲めば子どもが生まれるという薬を9粒くれます。9つの薬をいっぺんに飲んだおばあさんはいっぺんに九人の赤ちゃんを生みます。生んではみたものの、今度は9人も育てられない!と困って泣いているとまた老人があらわれ、こどもは勝手に成長するから大丈夫と言ます。そして子どもたちそれぞれに名前をつけてくれます。その名というのは「ちからもち」「くいしんぼう」「はらいっぱい」「ぶってくれ」「ながすね」「さむがりや」「あつがりや」「切ってくれ」「みずくぐり」というなんともヘンなものでした。さてさて成人したきょうだいはひょんな事から王様に命を狙われるようになります。しかしきょうだいたちは、それぞれの名前通りの特質を使って王様をやりこめてしまいます。「切ってくれ」は王様に切りつけられても「ああ、いいきもち、もっとちからをいれて切ってくれ! 」とへっちゃら、「さむがりや」は火の中に放り込まれてもニコニコと笑っている‼︎といった具合です。〜長女はとにかくバカウケ。読み終わった瞬間にすかさず「もう一回(読んで)‼︎」。こうなると、どんなに疲れていてももう一回読むまでは許してくれないので仕方なくもう一度読みましたが2回目も大爆笑でした。さっき絵本ナビ(↑のリンク)を見たところ、1969年発売以来読み継がれているロングセラーなんですね。全然知りませんでしたが人気があるのも深く納得、な一冊でした。